日本国内閣の招待を受け、グエン・フー・チョン・ベトナム共産党書記長が９月15日から18日まで日本を公式訪問します。共産党中央執行委員会書記長は、ベトナムでは最高指導者のポストです。書記長が外国を訪問する場合は、その二国間関係の新たな進展づくりを目標とする場合に限られています。今回のチョン書記長の訪日は、その意味でも両国が大変重要視している意義深い政治行事になります。

　ベトナムと日本の両国関係は順調に発展しており、２００９年にノン・ドック・マイン前書記長が訪日した際には、麻生太郎内閣総理大臣と会談し、二国間関係を戦略的パートナーシップへと格上げすることを確認しあいました。

　それ以来、両国関係は経済、人材育成、文化交流、科学技術だけでなく、全ての分野において非常に良好に発展してきています。政治的信頼関係の構築が、より一層緊密化し、徐々に司法、安全保障、国防分野へと拡大しています。二国間関係は政府とビジネス界の間だけでなく、国会、政党と地方自治体の間、ベトナム・日本国民の間でも強化しています。

　特に、ハイレベルでの交流は重要であり、国際会議や国際条理の際の首脳会談を含めて、ハイレベル会談は頻繁に維持されています。ベトナム首相は何度も日本を訪問しています。最近では、13年12月と15年７月に、グエン・タン・ズン首相が訪日しています。また、安倍晋三首相は、二度目の内閣総理大臣就任後初の外国訪問先としてベトナムを選ばれました（13年１月）。

　ツオ・タン・サン国家主席と令夫人も、14年３月に日本を公式訪問しました。この際、両国首脳は、アジアの平和と繁栄のための「広範な戦略的パートナーシップ」の樹立に関する共同声明を通じ、ベトナムと日本の新しい関係への発展を確認しあいました。

　地域と世界の情勢が複雑かつ予測不可能なほど激しく変化している中、越日二国間関係の良好な発展は、きわめて目立っています。国際社会の責任感ある積極的なメンバー諸国と、グロバル経済に市場を開放しているベトナムも日本も、地域と世界の経済的かつ政治的な不安定による消極的な影響を受けざるを得ません。こうした課題への挑戦において、喜ばしいことに、ベトナムと日本の関係の素晴らしい本質が、より明確かつダイナミックに表れています。

　両国政府と両国民は緊密に協力しあい、地域の平和、安定と発展を重視する、正しい経済政策と対外政策の立案を議論し、様々な合意を獲得しています。日本はベトナムの経済改革政策を支持し、国家工業化戦略の策定を支援し、東海（日本語名＝南シナ海）に関するベトナムの立場を支持し、海上安全確保能力向上を含む切実な案件を通じて、高いレベルで対ベトナム政府開発援助（ＯＤＡ）供与を維持しています。ベトナムは、日本が地域と世界の平和、安定、協力と発展を促進するため、より大きく積極的な役割を果たされることを支持します。

　このように、良好に発展している二国間関係と複雑に変化している国際情勢の中、グエン・フー・チョン書記長の日本訪問が周到に準備され、ベトナム・日本広範な戦略的パートナーシップが正しい方向へ動き、今後、包括的かつ実質的に強化されることを期待しています。

　今回の訪日は単なるシンボル的なものではなく、両国関係のさらなる強化のための大きな原動力となり、政治的信頼関係、外交、安全保障・国防関係の強化に寄与します。同時に、両国経済の連携強化を促進していきます。成功裏に実施された書記長の中国訪問（15年４月）と米国訪問（15年７月）とともに、ベトナム最高指導者の今般の訪日は、独立、自主、平和、協力と発展の対外指針、国際社会への積極的かつ主導的統合、国際社会の責任あるメンバーの主張を一貫して確認するためのものでもあります。

　ベトナムは、日本を最大級の重要な友好国とみなしています。日本が継続してベトナムの首脳陣をきわめて友好的に迎え、特にグエン・フー・チョン書記長を公賓として招待したことは、日本がベトナムを重視していることの表れでもあります。16年初めには、ベトナム共産党第12回大会が開催され、20年までの国家発展の方向性を出す時期にあたります。その意味でも、今回の訪問の意義は、より重要になります。

　こうした意義を踏まえ、グエン・フー・チョン書記長の今般の日本公式訪問は、近年の二国間関係を評価しあい、今後の関係のビジョンを策定しあう良い機会です。日本滞在中には、天皇陛下の御引見、安倍総理との会見が予定されています。会談では、アジア太平洋地域の平和、安全保障、安定、協力と発展に積極的に貢献し、協力を強化するために、東海問題を含む地域と世界の問題について議論し、見解と認識を共有しあいます。

グエン・クオック・クオン

駐日本ベトナム特命全権大使

(グエン・フー・チョン書記長の公賓訪日に日本経済新聞に寄せて)