天皇、皇后両陛下は6日、7日間にわたるベトナム親善訪問とタイ前国王弔問の旅を終え、政府専用機で帰国された。ベトナムは国を挙げての歓迎ぶりで、両国の絆はより深まった。同時に両陛下は残留日本兵の家族と面会するなど、埋もれていた歴史を知る機会をつくられた。旅と人々との出会いが天皇の「象徴的行為」として大きな意義を持つことが改めて示された。

 初めて国賓として天皇、皇后両陛下を迎えたベトナム側は前例のない厚遇ぶりだった。2月28日にハノイの空港に到着した両陛下を迎えたのは国家副主席。通常は官房長官が対応するところを格上げした。3日には同国の最高指導者である共産党書記長が党別荘に両陛下を迎えた。これまで国賓は党本部に出向くのが慣例で、初めてのことだった。

 ベトナム国民の反応も非常に好意的で、両陛下の車列が通る沿道では多くの市民が両国国旗の小旗を振って歓迎した。同国中部のフエでは通行路の両側に伝統衣装アオザイの女性が延々と並ぶ光景が圧巻だった。同国メディアは連日、両陛下の動向を大きく報道した。

 一方、両陛下は2日、ハノイ市内で残留日本兵の家族らと懇談された。太平洋戦争後に戦地に残留した日本兵が数多くいたことは知られていた。しかし、彼らと結婚した現地女性が夫が帰国したあと、差別と貧困のなかで苦労して子供を育ててきた事実には目が向けられてこなかった。

 残留日本兵の家族は両陛下が「(自分たちに)特別な感情を持っていただいてありがとうございます」と涙を流して感動していた。「自分たちは忘れられていない、見捨てられていなかった」と受け取ったからだろう。

 天皇陛下は昨年8月のお言葉で天皇の象徴的行為として、遠隔の地や島々など各地への旅を挙げられたが、海外訪問もその延長線上にある。社会の片隅で忘れられていた人々、事実に光を当てる。象徴ゆえに、そして象徴にしかできないことかもしれない。

 そして天皇陛下は繰り返し述べてきた「歴史を知り、教訓とする」ことも今回の旅で実践された。4日に両陛下がフエのファン・ボイ・チャウ記念館を訪れたことで、この独立運動家と、ベトナム人が日本に学んだ東遊運動、彼らを支援した日本人の存在が注目されることになった。

 天皇陛下は「過去のことを振り返りながら日本がどういう道を歩んできたか、ということを日本の人々が知っていくということは大変大事なこと」と述べられた。

 日程は両陛下の年齢に配慮したものだったが、終盤はお二人に疲労の様子も見えた。退位の問題もあり、今回が最後の海外親善訪問となるかもしれない。訪れる側と迎える側に誠実さと温かさ、信頼と学びが見られた旅だった。

(日本経済新聞)

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